Spider-Man : ディズニーはどうして、あえて競合他社のソニーの映画を作ってあげることにしたのか ? !、「スパイダーマン : ホームカミング」の背景の事情が伝えられた ! !
ソニーなんかにもう「スパイダーマン」の映画を作ってほしくない!!と、コミックヒーロー映画のファンが同社を毛嫌いしているから…
TV Spot : Spider-Man: Homecoming
…というわけではなくて、もちろん、企業として、それなりの理由があるから…という金銭事情について、経済メディアのウォール・ストリート・ジャーナルのベン・フリッツがレポートしてくれました…!!
2009年の夏に約3,720億円を投じて、マーベル・エンタテインメントを買収し、コミックヒーロー映画シリーズのマーベル・シネマティック・ユニバースを大成功させたディズニーとしては、マーベルが過去に他社との間で結んでしまった契約により、一部の人気キャラクターを自分たちの自由には使えないことがネックになっているのは、常連のCIAリーダーのみなさんはよく、おわかりかと思います。
その最たる例が、ソニー・ピクチャーズが映画化の権利を握っているスパイダーマンのわけですが、他社のDCコミックスのスーパーマン、バットマンらと並んで、アメコミを代表するヒーローとして、世界的に愛されているクモ男は、マーベルが生みだしたキャラクターのうち、最も知名度が高く、成功したものと言えるだけに、ソニピがけして権利を手放さないのは容易に理解できると思います。
しかしながら、アンドリュー・ガーフィールドを主演に起用して、ソニピが製作した「アメイジング・スパイダーマン」シリーズは、コミックヒーロー映画ファンの支持を得られず、2本を作っただけで、まさかの途中で打ち切りになってしまったことから、せっかくのスパイダーマンのキャラクターを活用できない同社が権利を持ち続けるのは猫に小判 & 豚に真珠の宝の持ちぐされだから、それをディズニーに返還すべきだというのが、ファンの間での世論の主流になってしまいました…。
スパイダーマンが本来いるべき場所のマーベルに帰ってくれば、マーベル・シネマティック・ユニバースの「アベンジャーズ」のヒーローの仲間にも加われますし、コミックヒーロー映画の世界のよりダイナミックな展開を期待して、ファンはソニーに対し、スパイダーマンを返せ!!と、しきりにアピールのバッシングをするようになったのも無理ありませんが、実のところ、ディズニーは2011年のうちに商品化の権利は取り戻すことが出来ていたそうです…!!
となると、マーク・ウェブ監督の「アメイジング・スパイダーマン」シリーズの第1作めが封切られたのは、2012年でしたから、その時点でもう、アンドリュー・ガーフィールドのスパイダーマンの商品化によって、ディズニーは利益を得ていたことになりますし、それは同時に「2」(2014年)の絶不評の打ち切りによって、ディズニーもまたダメージを受けていたことになるはずです。
よって、「スパイダーマン」シリーズを復活させるというのは、ソニーのみならず、ある意味では運命共同体のようなディズニーにとっても重要な課題ではなかったのか…?!と憶測することができそうですし、2014年に起こったハッキング事件によって流出したとされる情報にもとづけば、スパイダーマンをまた映画に登場させるプランを最初に持ちかけたのはディズニー・マーベルの側だった…というのも信ぴょう性を持って、受けとめられます。
それでは、その商品化の権利がどのぐらい価値のあるものなのか…?!というのが、ここで気になってしまいそうですが、ディズニーは2016年のうちに「スター・ウォーズ」のおもちゃのセールスによって、約7億6,000万ドル=日本円にして約854億円もの巨額を集めることができたそうです…!!
この巨額の約7億6,000万ドルというのは、単におもちゃのセールスだけだそうですから、その他の関連商品の売り上げなども含めれば、数字はさらにグンと大きく伸びそうなことはお察し頂けるかと思います。
2016年にそれだけの「スター・ウォーズ」の好景気に沸いたというのは、とりもなおさず、2015年の暮れに覚醒トリロジーの第1弾「ザ・フォース・アウェイクンズ」が封切られて、超特大のヒットになったことが引き金であるのは間違いありません。
ディズニーとしては、約2億4,500万ドルの製作費を投じた「スター・ウォーズ : ザ・フォース・アウェイクンズ」の全世界での興行成績のトータルが、約20億6,822万ドル=日本で約2,324億円だっただけに、映画自体でも大儲けができていたことになりますが、それに付随して、キャラクターのライセンス料でも巨額のお金を手にすることができたわけですから、とにもかくにも、映画は作ったほうがよいと言うことができそうです。
しかし、ソニピが失敗をして、打ち切りになった「アメイジング・スパイダーマン」シリーズは、第1作めが製作費の約2億3,000万ドルに対して、興行成績のトータルが約7億5,793万ドルですから、宣伝の諸経費を踏まえると充分に利益をもたらしてくれたとは思えませんし、第2作めに至っては「スター・ウォーズ 7」と同等の製作費の約2億5,000万ドルに対して、結果は約7億898万ドルだったので、ソニーがもう止めよう…と決めたのも仕方がありません。
でも、そうしたソニーの興業の挫折の裏で、スパイダーマンの商品化の権利を取り返していたディズニーには、どれだけのお金が転がり込んでいたのか?!、先の「スター・ウォーズ」の事例を踏まえると、ソニーさん、止めないで…!!というのは想像できそうです。
ですから、2015年の2月に、スパイダーマンを共有するという歴史的合意を、ソニーから取りつけることに成功したディズニー側が、映画化の権利を引き続き保持するソニーが、スパイダーマンの映画を製作するたびに、3,500万ドル=約39億円をソニーに対して支払うと約束をしたというのは、一見して何だか辻褄があわないような感じですが、商品化の利益を踏まえると納得ができるかと思います。ただし、その興業的失敗を補う補償金みたいな3,500万ドルについては、映画の興行成績が、7億5,000万ドルに達して、製作費を出資したソニーのリスクが回避される見込みになれば、減額される…という取り決めが交わされたそうです。
そうしたソニーとディズニーとのスパイダーマンというヒーローをめぐっての利益の配分は、その後、話し合いが進んで、現在はシンプルに映画の売り上げは、その製作費を出資したソニーが独占し、ディズニーはキャラクター商品などの周辺のビジネスから利益を得るということで落着しているそうですが、もちろん、現場で実際に映画を作ったマーベルに対しては、その賃金がソニーから支払われることになります。
…といった両社の事情をカンタンにまとめると、ソニーが全額を出資した「スパイダーマン : ホームカミング」の約1億7,500万ドルの製作費のうちから、言わば下請として、現実に映画を製作したマーベルは手間賃を受け取ることができる。映画を封切った結果の興業などから得られるお金はすべて、ソニーのふところに入る。ただし、キャラクター商品の売り上げはすべて、マーベルの親会社のディズニーのものになる…というのが歴史的合意の中身だったことになりますが、ディズニー・マーベルとしては、「スパイダーマン」の本流シリーズに加えて、自社のシネマティック・ユニバースにもトム・ホランドのハイスクール・スパイダーマンが登場するわけですから、「キャプテン・アメリカ : シビル・ウォー」(2016年)や、これから封切られる「アベンジャーズ : インフィニティ・ウォー」(2018年5月4日全米公開)でも、スパイダーマンのキャラクター・ビジネスを展開できるというメリットもあることになります…!!
然るに他社のソニーの「スパイダーマン」シリーズに、ロバート・ダウニー・Jr. のアイアンマンを投入したばかりか、続編にもアベンジャーズのヒーローを絡ませるというのは、実のところはファン・サービスと言うよりも、とにかく映画を大ヒットに導いて、興行的に成功のうま味を、ソニーに与えてやらなければならない…というディズニー側が必勝を期した起爆剤だったようにも思われますが、さて、ディズニー・ソニー・マーベルの運命共同体は無事に発進することができるのか…?!、その行方を窺う「スパイダーマン : ホームカミング」は、来週末の7月7日から全米公開です…!!