Box Office : 11月16日～18日の全米映画ボックスオフィスTOP5の第5位

オスカー最優秀作品賞に選ばれた「12イヤーズ・ア・スレイブ」の監督が、「ゴーン・ガール」の原作者と組んで、ドンデン返しを盛り込んだ犯罪映画の傑作「ウィドウズ」を創り上げるも、映画の位置づけがよくわからないことで、不入りに陥った初登場第5位 ! !

第5位 (初) 「ウィドウズ」(4,200万ドル)

$12,300,000−(2,803館/$4,388)−$12,300,000

Trailer : Widows

★RT支持率は評論家 91 % , 観客 66 % / Metacritic スコア 85 / 出口調査の CinemaScore B

1983年にイギリスで放送されて、好評を博し、2年後の1985年にはシーズン 2 も披露された同名のテレビシリーズの内容をご存知の方は別にビックリしないでしょうが、その元ネタを知らない人にはドンデン返しと言える展開が含まれていることになるリメイク映画「ウィドウズ」を配給した 20世紀FOX が、週末3日間の売り上げのオープニング成績の見込みとして、約1,230万ドルの金額を発表してくれました…！！

大人志向の映画が対象とする大人の観客は、いの一番に観よう！！と封切り興行に焦って、足を運ぶことはなく、自分の都合にあわせて、映画館にやって来るため、封切り成績の金額が期待値に見合わなかったとしても、いきなり失敗…と言うことは、けして、出来ないのですが、少なくとも1,500万ドル前後は稼げると踏んでいた FOX にとっては、約1,230万ドルの金額は、ややガッカリの残念な結果となっています…。

2014年に授賞式が開催された第86回アカデミー賞の最優秀作品賞と助演女優賞（ルピタ・ニョンゴ）・脚色賞に選ばれ、3冠を果たした「12イヤーズ・ア・スレイブ」（2013年）のスティーブ・マックイーン監督が、同映画以来約5年ぶりに発表した新作であることや、大ヒットになった「ゴーン・ガール」（2014年）の原作者のギリアン・フリンが、映画化の脚本を執筆したことで注目度の高かった「ウィドウズ」は…、

先々月の9月に開催された第43回トロント国際映画祭でのプレミア上映で高評価を博したのち、様々な映画祭の上映でも絶賛を贈られ続けたことから、来春のオスカーでも複数部門の候補にあげられることが期待視されてるだけに、映画の格付けサイトRotten Tomatoesでは、90％以上の高い支持率となっています！！

それなのにどうして、封切りの興行は今ひとつ不入りだったのか…？！というのは、むしろ、そのように高評価だからこそ、敬遠された…という翻った見方が出来なくもないようです。と言うのも、ごく当たり前に映画を楽しみたい一般の観客としては…、

強盗団の夫たちが遺したツケを、あろうことか、妻たちが支払うハメとなり、未亡人強盗団のウィドウズを結成して、落とし前をつけることに…！！という物語を、クライム・スリラーのアクション映画の娯楽として、観ることができるものなのか？！、それとも、娯楽映画とは言えない「12イヤーズ・ア・スレイブ」で、アカデミー賞を席巻した真面目な監督が、評論家から絶賛されて、再びオスカー候補に…！！と言われている作品だけに、実は犯罪映画の体裁をとった映画賞狙いのシリアスな人間ドラマなのか？！が、予告編を観ても、今ひとつ判然とせず、同じく女性の強盗団が主人公だった今夏のヒット作「オーシャンズ 8」が明らかに娯楽だったのとは違い、この「ウィドウズ」は映画の位置づけが、よくわからないわけです…。

そうした事情に加えて、物語の核になっている強盗のヤマには、政治の腐敗が絡んでいたり、未亡人の女性たちが力づくで、問題の解決に乗り出すプロットは、あたかも、女性たちが自分たちの立場を声高に訴え始めた最近の社会の動きを反映したように受けとめることができなくもありませんから、クライム・スリラーの強盗映画と言われても、何だか込み入って、スッキリしない社会派映画のようにも観えてしまいます…。

また反対に良質な作品を観たいと思っている映画通は、この「ウィドウズ」が、いわゆるシネマ・スペシャリテとして、限定公開での封切りではなく、大々的に大衆に向けて、感謝祭のイベント映画？！のように、全米公開されていることにも違和感を持ってしまいそうです…。

ダミアン・チャゼル監督の「ファースト・マン」が、先月10月の全米公開で振るわず、期待に反して、墜落した結果を踏まえると、オスカー受賞の監督が、またあらためて絶賛を博した傑作！！とアピールするのは、アカデミー賞そのものが不人気となってきただけに、下手をすると逆効果なのかもしれません…？！

なので、もしかすると封切り方を間違えたかもしれない FOX としては、これから本格化する映画賞レースで、この「ウィドウズ」がどれだけのノミネートを獲得することができるのか？！の実績で、あらためて、注目を集める策を考えた方がよいのかも…？！、ただし、この出足からすると約4,200万ドルの製作費を取り返すのは苦労しそうですね…。

B-Roll :「ウィドウズ」の撮影の様子を紹介したメイキング・ビデオ ! !